2024年に電撃な退団をした、宝塚歌劇団雪組の元男役、和希そら(かずき そら)さん。
退団してすぐにフェミニンなスタイルに大変身し、既にファンを驚かせてくれています。
これまでに和希そらさんの基本データ、宝塚音楽学校時代などのエピソードをお伝えしてきました。
第3弾となる今回は、和希さんの宙組時代を中心に詳しくお届けしていきたいと思います。
和希そら:宙組オスカル新人公演で頭角をあらわす
宝塚音楽学校を卒業後、宙組に配属された和希そらさん。
なにしろ音楽学校卒業時の成績は2番という超成績優秀者!
舞台で目立つ場面や台詞が与えられる前から、自然とファンの注目は集まっていました。
宙組に配属されて3年目あたりから、ようやく新人公演で主要な役を任されるようになります。
そして入団5年目でついに主演を掴み取ります!
しかも、作品は宝塚の代表作『ベルサイユのばら』!もちろん主役はオスカルです。
これで「やっぱり頭角を現してきた!和希そら!」と、宙組ファンは更に注目度を高めます。
しかも、1期上級生である桜木みなと(さくらぎ みなと)さんよりも早く主演を掴みました。
桜木さんも和希そらさん同様、新人公演で既に主要な役を務めていました。
その桜木さんよりも早い主演抜擢に、「宙組は桜木さんよりも和希さんを推していくのか?!」という部分も、宙組ファンが大注目した理由の一つだったように思いますね。
しかしその後、2人の立場は逆転。
桜木さんは最終的に新人公演の主演2回、バウホール公演の主演も早々に決めて、「宙組の御曹司は桜木みなと」という位置を確立していきます。
和希そらさんは『ベルサイユのばら』以降の新人公演主演には選ばれず、たった1回の新公主演となってしまいました……。
「新人公演主演1回」というのは、トップスターになるにはちょっと厳しい条件なのです。
和希ファンは「路線なの……?路線じゃないの……?」という不安を常に抱えて応援していくことになります。
和希そら:宙組での朝夏まなとの出会いで知名度アップ
「ベルばらの新人公演主演を射止めたのは、和希そら!」というニュースはもちろんファン内に大きく轟きました。
しかし、実はその1年前、和希そらさんを一躍有名にした出来事がありました。
宝塚専門チャンネルで放送された、当時2番手スターだった88期の朝夏まなと(あさか まなと)さんの『Brilliant Dreams +NEXT』という特番への出演です。
当時入団4年目で新人公演主演前だった超若手の和希そらさんと、キラキラの2番手スター様である朝夏さん。この間には大変な距離があります。
この2人が仲良くなれるきっかけというのは、なかなかありません。
お稽古場で踊っている和希そらさんの様子を垣間見た朝夏さんが「ダンス、好きなの?」と声をかけたのが、2人の距離が縮まるきっかけだったそうです。
朝夏さんもダンスが得意なスターさんでしたので、その特番もダンスに焦点を当てた内容でした。
「ダンスが好きなら、番組出てみる?」とお声がけがあり、ついに映像デビュー!
しかも、「やんちゃ坊主」全開!!
大はしゃぎしながら一発ギャグをかますキャラクターが大ウケ!全回レギュラー出演の座も射止めます。
朝夏さんも爆笑しながら、和希そらさんの元気な姿を見守っていました。
しかも、ダンスを踊らせれば目をみはるほどのグルーヴ感を持ち、タカラジェンヌにあまりいない個性を輝かせていきます。
のちに「ずんそら」(桜木さんと和希さんのコンビ愛称)として一大勢力を築くことになる相方、桜木みなとさんもやや小柄で非常に明るい性格。
2人はいつもワーワーギャーギャーと、子供のように朝夏さんのまわりを転げまわっていました(笑)。
そんな「ずんそら」は宙組のマスコットキャラクター的な人気を獲得していきます。
和希そら:宙組時代は女役で新境地!
ベルばら以降、和希そらさんは主演を掴めないまま新人公演を卒業します。
桜木みなとさんは早々にバウホール公演の主演も務めていたのに、和希そらさんにはなかなかそのお話も来ません。
やっぱり路線スターではないの……?と思っていた矢先。
8代目宙組トップスターの真風涼帆(まかぜ すずほ)さんのプレお披露目公演『WEST SIDE STORY』にて大役がまわってきます!
ヒロインの兄、ベルナルドの恋人役・アニータです。つまり、女役。
これまでに女役の経験がほとんど無い和希そらさんにとって、これは非常に大きな転機となりました。
東京公演では和希そらさんがアニータ役、大坂公演では桜木みなとさんがアニータ役を務めました。
既に大差をつけられていた桜木さんとのWキャストだったのも、「やっぱりまだ推されている!」とファンが確信できた部分のように思います。
とはいえ、和希さんは中性的なタイプでもないですし、声も低音です。
男役さんが女役に挑戦するとどうしても漂ってしまう「オカマ感」。
そらちゃんはどうなってしまうのか……と緊張の初日を迎えました。
和希そら:宙組時代はアニータ役・リリー役で女を上げる!
しかし!その完成度の高さは、衝撃でした。
難しいダンス場面の多い作品ですので、スーパーダンサーである和希そらさんはもう水を得た魚。
ピンヒールを履いて踊りまくります。
しかも、懸念されていたオカマ感も皆無!むしろ、特に高い声で喋るように変えているわけでもないのに、仕草や演技力の高さで「どう見ても女性」でした。
ベルナルド役は、この作品で宙組に組替えでやってきた芹香斗亜(せりか とあ)さん。この初コンビも、オトナな空気をまとって色気たっぷり。
ゾクゾクっとするようなセクシーな表情も(#^^#)
「やっぱりすごいぞ、和希そら!」とまたひとつ評価を上げる素晴らしい役となりました。
そのアニータ役が評価されて、その3年後の公演『アナスタシア』でも再び女役に。
公私をきっちり使い分けるキャリアウーマンを見事に演じ切りました。
ちなみに、その『アナスタシア』で演じたリリーという役の台詞「人生は楽しまなくっちゃ!」は和希そらさんの座右の銘となったようです(^_^)
和希そら:宙組での代表作は?ライナス役が転機!
「女役もこなせる男役」というのは、男女を自由に使い分ける高い実力あってこそ。宙組にとって非常に心強い実力派として組を支えていた和希そらさん。
さらに追い風となったのは、『オーシャンズ11』でのライナス役でしょう。
映画で有名な『オーシャンズ11』は宝塚にとっても大人気作で、当時の宙組で3度目の公演でした。
初演(星組)のライナス役は、真風涼帆さん。
再演(花組)のライナス役は、芹香斗亜さん。
そして、3度目のライナス役が、和希そらさん。
なんと、歴代のライナス役が当時の宙組にちょうど集結していました!アドバイス貰い放題(笑)!
しかし、和希さん曰く、あえて自分なりのライナスを追求したそうなので、歴代2人から手取り足取り……ということはしなかったそうです。
担当演出家の小池修一郎先生からも、相当厳しくしごかれたそうな。
小池先生のしごきは有名ですので、何度やっても「違う」「違う」と言われ続けたそのモヤモヤは、ライナスが抱えているモヤモヤに通じるところがあります。
小池先生はそこを狙ってあえてしごきまくったのかもしれませんね。
ここでもうひとつ「和希そらならでは」のポイントを挙げてみると、演じたときの学年に注目です。
ライナスを演じた当時の真風さんは、入団6年目。芹香さんは入団7年目。
和希そらさんは、入団10年目です。
ライナスというのは10代の少年、しかも中2病から抜け出せていないような、幼い部分を残しているキャラクターです。
「男役10年」という言葉があるように、10年経てば男役として完成している、ベテランに入るような学年。
そのような学年で、10代の少年が醸し出す新鮮さや幼さが表現できるのも、やっぱり和希そらさんの実力のなせる技のように思います。
和希そらバウ主演2作!『ハッスル・メイツ』『夢千鳥』
新人公演では主演を一度しか掴むことができず、バウホールでの主演の話もなかなか来ない……。
そんな焦りを、きっとご本人もファンも抱えていたと思います。
そこで、ようやくバウホール主演のチャンスが!!!
入団9年目にして、当時創立20年を迎えていた宙組を祝うアニバーサリー的な公演『ハッスルメイツ!』の主演を任されます。
ご本人も「まさか主演のお話をいただけるなんて……」と仰っていたので、スター路線で活躍していくことはもう諦めていたのでしょう。
とはいえ、『ハッスルメイツ!』はショー作品。
ダンサー&シンガーである和希そらさんにピッタリですが、お芝居のバウ作品に比べると「路線スター」と言い切るにはまだ少し弱い部分があります。
宙組を祝う作品の主演ですから、名誉なことではあるのですが。
本当はお芝居のバウ作品の主演が欲しい……とファンは祈っていたところ、ついに入団12年目で名作『夢千鳥』に巡り合えます!
結果的に、この『夢千鳥』が「和希そらのために書かれた」唯一のオリジナル作品となりました。
和希そら代表作『夢千鳥』唯一のオリジナル作品にして伝説
『夢千鳥』は、美人画に定評のある竹久夢二を主人公にした物語です。
退廃的かつ狂気的、そして官能的な竹久夢二を、和希そらさんは完璧に演じ切りました。
相手役となった天彩峰里(あまいろ みねり)さんも、宝塚の娘役が演じるには相当型破りな他万喜(たまき)役を阿修羅のように演じ切りました。
妻・他万喜へのDV場面が段々と切り替わって、愛憎まみれる2人の関係性をタンゴで表現した場面はもう毎回鳥肌が立ちました。
そしてもうひとつの鳥肌場面は、穏やかな愛情を育んでいた恋人・彦乃が死んでしまい、そのあまりの悲しみで夢二が踊り狂う場面。
ここでダンサー・和希の見せ場を作ってきた演出家・栗田優香先生に天才的な才能を感じました。
和希そらさんの断末魔のような絶叫から始まるこのダンスは毎度壮絶で、涙と鳥肌にまみれて震えながら観た思い出です。
『夢千鳥』は宝塚史に残るような名作ですが、夢二も他万喜も、和希&天彩以外で演じ切れるタカラジェンヌはいないでしょう。
それほど、伝説的な作品となりました。
また、ちょうどこの公演からコロナ時代に突入していきましたので、『夢千鳥』もたった4日で公演は中止。
その救済として、無観客で録画した舞台映像を配信する「ディレイ配信」を実施したのも、いまのところ『夢千鳥』のみです。
生で観劇できた人はひと握りであり、宝塚で唯一「ディレイ配信」を採用した。そういう意味でも本当に伝説の作品と言えるでしょう。
ちなみに、天才的な才能を見せた栗田優香先生はなんと『夢千鳥』がデビュー作で、そのあとも発表する作品すべてが大好評。
今後、宝塚を支えていく人気演出家となっていくでしょうね。
和希そら:宙組4番手スターへ!ずんそら人気も組替へ!
遅咲きながらようやくバウホール公演の主演も掴み、実力も申し分ない。宙組で桜木さんに続く4番手スターに確定した!と思っていたところに!
……衝撃の組替え発表が待っていました。
12年いた宙組を離れ、雪組へ。
専科以外の組替えは割と若い学年で実施されることが多いので、和希そらさんの学年での組替えは割と異例でした。
組替えと言ってもいろんな意味合いがありますから、ファンは「どういう意味……?!」と戦慄します。
しかし、蓋を開けてみればこれは「栄転」の組替えでした。入団12年目でまだ4番手というのは、他組に比べてみればだいぶ渋滞気味です。
早いタカラジェンヌは入団12年~13年でトップスターに就任するような学年ですから。
それが、雪組に行けば学年的に考えても実績的に考えても、和希そらさんが3番手の枠に入ります。
劇団としても「和希をトップ候補として本格的に育てていこう」という思惑があったのだろうと推測します。
昇進はファンとしてはもちろん嬉しいオドロキではありますが、一大勢力を誇っていた「ずんそら」の解散は非常に寂しいものがありました。
和希そら:雪組へ組替え!新たな和希そらへの脱皮?
『WEST SIDE STORY』で大の仲良しになった芹香さんとのお別れも同様。
宙組最後の出演作となった『プロミセス・プロミセス』の千穐楽では、カーテンコールで主演の芹香さんが涙ながらに花向けの言葉を送っていました。
宙組で「みんなの弟」として大変に可愛がられてきた生育環境もあったので、一抹の寂しさはファンもご本人も宙組内も、あったでしょう。
舞台上でサプライズで花束を贈られると、さすがに目から涙がこぼれているようでした。それをササっと拭いて笑顔で場を盛り上げていた姿はさすがソラカズキ。
一発ギャグとかを見せてしまうようなお茶目なキャラクターの和希そらさんですが、実は結構な人見知り。
12年も過ごした馴染みの環境を離れて、一から関係性を構築していくこともご本人的には不安が強かったのではないでしょうか。
いざ雪組に行ってからは、もちろん雪組の皆さんが温かく迎えてくださっている様子は感じましたが、宙組にいた頃の空気感とはずいぶん変わったなあ、という印象です。
それがタカラジェンヌ・和希そらとしての最後の決断に繋がったのでしょうか……?
和希そら第4弾は、雪組時代のエピソードをまとめていきます。
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